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設備会社にとって、受注前の見積もり作業は避けて通れない道です。案件を受けられるかどうかが確定していない段階でも、図面を読み解き、必要な資材や数量を算出し、見積書として形にする必要があります。
しかし、建築図面をもとに水道管や換気扇の配置を検討し、必要な資材を拾い出していく作業には、膨大な時間と労力がかかります。しかも、急ぎの依頼や複数案件が重なると、どうしても「間に合わせるための作業」になり、余裕を失いやすい領域でもあります。
「仕事をもらえるか分からない段階で、ここまで工数をかけていいのか?」
そんな切実な相談から、今回のプロジェクトは始まりました。現場の負担を減らしながら、見積もりの質も落とさない。その両立を目指した取り組みです。
これまでの業務フローは、以下のような非常にアナログで根気のいる作業でした。
一つひとつの工程はシンプルに見えても、図面の情報量が多いほど作業時間は膨らみます。また、色分けのルールや計測の基準が担当者ごとに微妙に違うと、結果のばらつきが生まれ、確認や手戻りが発生しやすくなります。
この「測って計算する」プロセスは、ミスが許されない一方で、人の手で行うには限界がありました。特に、縮尺の読み違い・線の見落とし・転記ミスなど、細かなヒューマンエラーが積み重なるリスクを常に抱えていました。
そこで私たちは、生成AIを活用して「図面の色と縮尺を判別し、自動で集計するツール」を構築しました。ポイントは、現場の既存のやり方(色分けして拾う)を大きく変えずに、負担の大きい部分だけを機械に任せる設計にしたことです。
ユーザーは「どの色をどの設備とするか」を定義するだけで、これまで数時間かかっていた計算がわずか数秒で完了します。作業の最終判断は人が持ちつつ、時間を奪う集計処理を自動化することで、見積もり業務の生産性を大きく高める狙いです。
本ツールの導入により、単なる作業の置き換えにとどまらず、見積もり業務全体の品質と進め方そのものを改善していく効果が期待されています。効果測定はこれからですが、現場での運用が定着することで、次のような変化につながる見込みです。
今回の事例は、生成AIが単なるチャットツールではなく、実務に根ざした「強力な武器」になり得ることを示す取り組みです。現場が抱える課題を丁寧に分解し、機械が得意な部分を切り出して自動化することで、日々の業務はもちろん、提案力や品質の底上げにもつながっていきます。
「アナログな作業だから自動化は無理だ」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。業務の実態に合わせた設計で、現場の負担を減らし、企業の強みに変えていくお手伝いをいたします。