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【事例紹介】受注前の見積もり工数を大幅削減!生成AIによる「図面自動積算ツール」の構築

1. はじめに:設備業界が抱える「見積もり」のジレンマ

設備会社にとって、受注前の見積もり作業は避けて通れない道です。案件を受けられるかどうかが確定していない段階でも、図面を読み解き、必要な資材や数量を算出し、見積書として形にする必要があります。

しかし、建築図面をもとに水道管や換気扇の配置を検討し、必要な資材を拾い出していく作業には、膨大な時間と労力がかかります。しかも、急ぎの依頼や複数案件が重なると、どうしても「間に合わせるための作業」になり、余裕を失いやすい領域でもあります。

「仕事をもらえるか分からない段階で、ここまで工数をかけていいのか?」

そんな切実な相談から、今回のプロジェクトは始まりました。現場の負担を減らしながら、見積もりの質も落とさない。その両立を目指した取り組みです。

2. 課題:手作業によるアナログな積算プロセス

これまでの業務フローは、以下のような非常にアナログで根気のいる作業でした。

  • 建築図面に、水道管や換気扇などの設備を「色ペン」で書き分ける。
  • 図面の「縮尺」を確認しながら、色ごとの線の長さを測り、何メートルの資材が必要かを計算する。
  • 計算結果を元に見積書を作成する。

一つひとつの工程はシンプルに見えても、図面の情報量が多いほど作業時間は膨らみます。また、色分けのルールや計測の基準が担当者ごとに微妙に違うと、結果のばらつきが生まれ、確認や手戻りが発生しやすくなります。

この「測って計算する」プロセスは、ミスが許されない一方で、人の手で行うには限界がありました。特に、縮尺の読み違い・線の見落とし・転記ミスなど、細かなヒューマンエラーが積み重なるリスクを常に抱えていました。

3. 解決策:生成AI(画像認識)を活用した自動計算ツールの開発

そこで私たちは、生成AIを活用して「図面の色と縮尺を判別し、自動で集計するツール」を構築しました。ポイントは、現場の既存のやり方(色分けして拾う)を大きく変えずに、負担の大きい部分だけを機械に任せる設計にしたことです。

ツールの仕組み

  1. 色の判別: AIが図面上の色(青は水道管、赤は換気扇など)を瞬時に識別。
  2. 縮尺の解析: 図面に記載された縮尺情報を読み取り、実寸を把握。
  3. 自動計算: 各色ごとの線の長さを合計し、必要な資材のメートル数を自動で算出。

ユーザーは「どの色をどの設備とするか」を定義するだけで、これまで数時間かかっていた計算がわずか数秒で完了します。作業の最終判断は人が持ちつつ、時間を奪う集計処理を自動化することで、見積もり業務の生産性を大きく高める狙いです。

4. 導入効果(想定):工数削減だけではない、DXの真の価値

本ツールの導入により、単なる作業の置き換えにとどまらず、見積もり業務全体の品質と進め方そのものを改善していく効果が期待されています。効果測定はこれからですが、現場での運用が定着することで、次のような変化につながる見込みです。

  • 作業時間の大幅な短縮: これまで数時間かかっていた積算作業のうち、色判別・縮尺の読み取り・集計といった定型工程を自動化することで、作業時間の短縮が見込まれます。その結果、積算担当者は「測って計算する」こと自体に追われにくくなり、設計条件の確認や仕様の検討、見積もりの前提整理、顧客への提案づくりなど、付加価値の高い業務に時間を振り向けられるようになる想定です。
  • 精度の向上: 人手作業では、縮尺の読み違い・計測ミス・転記ミスなどが起きやすく、確認コストも増えがちです。本ツールの活用により、こうしたヒューマンエラーの発生要因を減らし、計算の再現性を高めることが期待されます。加えて、結果の根拠(どの色をどの設備として扱ったか)をルールとして明確化することで、担当者間のばらつきを抑え、より安定した見積もり作成プロセスを目指します。
  • 心理的ハードルの解消: 「受注できないかもしれない」という不確実性の高い局面で、単純作業に長時間を費やすことは、精神的な負担になりやすいのが実情です。積算の負担が軽くなることで、見積もり段階でのストレスを下げ、優先度判断や顧客対応に集中しやすい状態をつくることが期待されます。結果として、チーム全体のモチベーション維持や、案件対応のスピード感にも良い影響が出る可能性があります。

5. おわりに:技術で「現場の負担」を「企業の強み」へ

今回の事例は、生成AIが単なるチャットツールではなく、実務に根ざした「強力な武器」になり得ることを示す取り組みです。現場が抱える課題を丁寧に分解し、機械が得意な部分を切り出して自動化することで、日々の業務はもちろん、提案力や品質の底上げにもつながっていきます。

「アナログな作業だから自動化は無理だ」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。業務の実態に合わせた設計で、現場の負担を減らし、企業の強みに変えていくお手伝いをいたします。

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