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「数ヶ月かけて新規事業やシステム導入の計画を練り上げたのに、いざ実行する段階になったら、市場の状況や社内の体制が変わっていてやり直しになった……」
経営者やリーダーの皆様なら、一度はこんな悔しい経験があるのではないでしょうか。
昨今、多くの企業が取り組もうとしている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の現場でも、全く同じことが起きています。「失敗してはいけない」「無駄なコストはかけられない」と、導入前に分厚い計画書を作り、完璧なスケジュールを立てようとする企業は少なくありません。
しかし、結論から申し上げます。現代のビジネスにおいて、最初から最後まで「計画通り」に進むことは、ほぼあり得ません。
今回は、IT化やDXを進める上で、あえて「計画通りに進めない」ことを前提とする「アジャイル思考」についてお話しします。変化の激しい時代を生き抜くための、強力なマインドセットです。
新しいシステムを導入したり、業務フローを大きく変えたりする際、私たちはつい「完璧なロードマップ」を描きたがります。すべての課題を洗い出し、必要な機能をすべて盛り込み、全社一斉にスタートを切る。このような進め方を、ITの世界では「ウォーターフォール(滝)」と呼びます。一度水が落ちたら上には戻れないように、後戻りを想定しないやり方です。
この手法の最大の弱点は、「変化に極めて弱い」ということです。
例えば、1年がかりで大掛かりな業務管理システムを開発したとします。しかし、その1年の間に「主要な取引先の要望が変わった」「新しい法律が施行された」「現場のリーダーが退職した」といった変化が起きたらどうなるでしょうか? システムが完成した頃には、「今の現場には合わない、使い勝手の悪いもの」になっている可能性が高いのです。
さらに恐ろしいのは、多額の投資と時間をかけているため、途中で「やっぱりやめよう」「方向転換しよう」と言い出せなくなることです。本来は「現場を楽にするため」「利益を上げるため」だったはずが、いつの間にか「立てた計画を予定通りに終わらせること」自体が目的になってしまうのです。
そこで私たちがおすすめしているのが、「アジャイル思考」です。
「アジャイル(Agile)」とは、「素早い」「機敏な」という意味を持つ言葉で、もともとはソフトウェア開発の現場で生まれた手法です。その本質は非常にシンプルで、「小さく始めて、状況に合わせてどんどん軌道修正していく」という考え方です。
アジャイル思考でDXや業務改善を進める場合、以下のようなステップを踏みます。
まずは「最小限」で試す
全社一斉に導入するのではなく、「まずは営業部の一部メンバーだけで」「まずは1つの業務プロセスだけで」と、範囲を絞ってスタートします。完璧なシステムを作る前に、無料ツールや簡易的な仕組みで「お試し」をします。
現場のリアルな声(フィードバック)を集める
実際に使ってみると、「ここは便利だけど、あの入力欄は面倒くさい」「スマホから見づらい」といった、計画段階では気づけなかったリアルな問題点がすぐに見つかります。
すぐに修正・改善する
出てきた不満や要望をもとに、すぐにルールやツールの設定を変更します。そしてまた試す。これを短いサイクル(例えば1週間~2週間単位)で繰り返します。
アジャイル思考においては、「計画通りに進まないこと」や「途中で問題が出ること」は失敗ではありません。むしろ、早い段階で「このやり方では上手くいかない」と気づけた「大成功」なのです。
傷が浅いうちに軌道修正ができるため、結果的に無駄なコストや時間を大幅に削減でき、現場が本当に求めている「使える仕組み」に育っていきます。
「アジャイル思考」は、ITシステムを導入する時だけの専門用語ではありません。不確実な時代において、変化に強く、柔軟な組織を作るための経営哲学でもあります。
DXと聞くと、何か壮大で完璧なプロジェクトを立ち上げなければならないと身構えてしまうかもしれません。しかし、本当に効果が出るDXは、「今のやり方、ちょっと変えてみない?」という小さな実験の積み重ねから生まれます。
計画は、あくまで「その時点での仮説」に過ぎません。計画に縛られず、変化を歓迎する。そんなアジャイルな組織文化を育てていくことが、DX成功の最大のカギとなります。
まずは明日、社内の小さな業務を1つだけピックアップして、「とりあえず、この無料ツールで試してみようか」と声をかけてみませんか?
その身軽な一歩が、御社の大きな変革の始まりになるはずです。もし「何から試せばいいか迷っている」という場合は、ぜひ私たちにご相談ください。一緒に小さな第一歩を見つけるお手伝いをさせていただきます。